「ええんちゃうの・・・」
2010年 07月 27日
「ええんちゃうの・・・」 2010/7/27
訃報を聞いて、「大阪のオバサンが通りを掃くとき、隣の家の前もずーっと掃きますわな、あれはウットうしい。けど、東京のおばちゃんが、自分の家の前だけキッチリと掃く、あれも冷たいというか味気ないというか、いけませんなあ。それに比べて京都のおばちゃんは、ときどき、忘れた頃合を見計らうみたいにヨソの家の前もすーっと掃いたりする。これがええんですな。絶妙のバランスが・・・」という話を思い出したのだが、数学者・エッセイストの森毅(もりつよし)さんが亡くなった。
いつも大阪弁で「ええんちゃうの」という決めゼリフとともに、飄々とした、しかし切り口鋭いエッセイを書く人だった。
今回も本誌の数字クイズを書くために、財政赤字やら国民負担率を調べていて、「どうしてまた、日本だけが財政赤字200%(GDPの)などと突出してしまったんだろう、なにがそんなに極端なんだろう」と思っていた矢先に飛び込んできたニュースだった。
国民負担率は日本が約40%とOECD30カ国の中で下から4番目というのに驚いて、アメリカが同じく2番目というのにもっと驚いて、すぐ「ああ、レーガン革命か」と気がついたときだった。
1980年代、アメリカは威信回復のために、レーガン大統領は「小さな政府」「減税(+福祉の大幅カット)」「規制緩和(市場原理)」「マネタリズム」という4本柱の政策に大きく舵を切った。ノーベル賞経済学者であるフリードマンの「自由こそすべて」という信念から来る政策でもあった。
その後1990年代には情報革命やグローバル化という波にも乗って、また1991年にはソ連というライバルが消滅したこともあって、アメリカは世界唯一の超大国になり、レーガン革命は大成功したように見えた。1990年にバブルが崩壊してその後20年間も不況に苦しむ日本は、当然のように米国に追随しようとした。
しかし、投資銀行が暴走し、大企業500社の社長の平均年収が14億円にまで上がるような政策は、間違いなく極端すぎたのであろう。
もちろん、その前に自滅したソ連も極端すぎたことは明らかである。
そうだとすれば、一時「最後の社会主義国家」と揶揄されていた日本は、少なくともそのころは、森毅さんのいう京都のおばさんでありバランスがとれた国だったに違いない。
先進国最大の借金国家になった日本を、天国のエッセイストは「ええんちゃうの」と言ってくれるのだろうか。
訃報を聞いて、「大阪のオバサンが通りを掃くとき、隣の家の前もずーっと掃きますわな、あれはウットうしい。けど、東京のおばちゃんが、自分の家の前だけキッチリと掃く、あれも冷たいというか味気ないというか、いけませんなあ。それに比べて京都のおばちゃんは、ときどき、忘れた頃合を見計らうみたいにヨソの家の前もすーっと掃いたりする。これがええんですな。絶妙のバランスが・・・」という話を思い出したのだが、数学者・エッセイストの森毅(もりつよし)さんが亡くなった。
いつも大阪弁で「ええんちゃうの」という決めゼリフとともに、飄々とした、しかし切り口鋭いエッセイを書く人だった。
今回も本誌の数字クイズを書くために、財政赤字やら国民負担率を調べていて、「どうしてまた、日本だけが財政赤字200%(GDPの)などと突出してしまったんだろう、なにがそんなに極端なんだろう」と思っていた矢先に飛び込んできたニュースだった。
国民負担率は日本が約40%とOECD30カ国の中で下から4番目というのに驚いて、アメリカが同じく2番目というのにもっと驚いて、すぐ「ああ、レーガン革命か」と気がついたときだった。
1980年代、アメリカは威信回復のために、レーガン大統領は「小さな政府」「減税(+福祉の大幅カット)」「規制緩和(市場原理)」「マネタリズム」という4本柱の政策に大きく舵を切った。ノーベル賞経済学者であるフリードマンの「自由こそすべて」という信念から来る政策でもあった。
その後1990年代には情報革命やグローバル化という波にも乗って、また1991年にはソ連というライバルが消滅したこともあって、アメリカは世界唯一の超大国になり、レーガン革命は大成功したように見えた。1990年にバブルが崩壊してその後20年間も不況に苦しむ日本は、当然のように米国に追随しようとした。
しかし、投資銀行が暴走し、大企業500社の社長の平均年収が14億円にまで上がるような政策は、間違いなく極端すぎたのであろう。
もちろん、その前に自滅したソ連も極端すぎたことは明らかである。
そうだとすれば、一時「最後の社会主義国家」と揶揄されていた日本は、少なくともそのころは、森毅さんのいう京都のおばさんでありバランスがとれた国だったに違いない。
先進国最大の借金国家になった日本を、天国のエッセイストは「ええんちゃうの」と言ってくれるのだろうか。
# by chihirotp | 2010-07-27 17:43 | 随筆